どうも!放射線診断専門医・指導医、核医学専門医・指導医、PET核医学認定医、第1種放射線取扱主任者のふくろうです。
急な放射線科アピール…!
前半部分で初期研修医向け、他科医師向けにおススメの画像診断本を紹介していきます。
後半では専門医前の放射線科(診断)に向けて、アドバイス?とオススメ本を書きました。
週4非常勤のみで生活している私ですが、画像診断専科で非常勤で仕事を続けられるために意識していることがあります。オススメ本と題した本記事ですが、放射線科医として生き残る戦略についても書きました。たまには雑記的な記事も。
初期研修医向け画像診断オススメ本
まずは初期研修医向けです。
初期研修では放射線科を回った方がいいですよ!
将来CT・MRI読影は全くしないと言うならよいのですが、ほとんどの場合はそうはいかないでしょう。
例えば腹痛でCTを撮るにしても、臨床医の立場だと腹痛の原因を探してメイン所見だけカルテに記載すると思いますが、放射線科の読影は写っているところ全てに目を通して(どうでもいい所見を除いては)全部書くんですよね。全症例に対して「系統的読影」をすると、とにかく正常に慣れます。正常を徹底的に知ると、異常を拾えるようになる。まずはこれができるようになればいいんです。異常所見を拾った後は、調べるなり相談するなりすればいい。でも、異常であることに気が付けないと、次のステップに進めません。
なので、放射線科で1か月、できれば2か月ローテーションして、できるだけの症例に触れましょう。最初に「系統的読影」のやり方を教えてもらってください。例えば腹部なら、肝、胆道系、膵、腎、副腎、脾臓、下部食道~十二指腸、直腸~回盲部を追う、大血管沿い、その他の隙間を全部見る、骨軟部を見る…などの自分なりの全部の見方と順番を決めてしまうことですね。これができると異常を拾えるようになります。初期研修で、系統的読影をできるようにしましょう。系統的読影については、オススメのyoutube動画があり、「他科医師向け」の項目で紹介します。
頭部CT・頭部MRI・胸部CT・腹部CTは、病棟や救急外来をやるなら避けられないので、これを中心に研修していきましょう。
CT読影レポート、この画像どう書く?
オススメはこの本ですね。
画像解剖とcommon diseaseのエッセンスがまとまっています。普通の読影の本は疾患→所見という切り口が多いのですが、この本は臓器別で画像解剖のエッセンスを紹介してから、異常所見の画像→考えられる疾患→読影レポートの書き方という順で、common diseaseに特化しています。頻度の高い疾患に絞り、コンパクトに頭部~骨盤部の読影について学ぶことができます。
初期研修医は、この本を読めば読影って楽しいかも…と思うことができるのではないでしょうか。読影の入門的な位置付けですが、専門医前の放射線科医が読んでも学ぶことはあると思います。とにかくセンスのよい本です。
この本はツイートで紹介したときもかなりの反響がありました。
最近は回ってくる研修医でこの本を持っている人も多いのですが、「この本、最初に広めたのは俺なんだぜ…」などと思ったりします(たぶん違う)。
他科医師向けオススメ本
病棟や救急外来をやるなら、頭部CT・頭部MRI・胸部CT・腹部-骨盤部CTの読影はなかなか避けられません。
放射線科の読影レポートが付く病院ならまだよいですが、そういう病院ばかりではありませんし、夜間救急では自分で読影して判断しないといけません。
ここでもやはり、検査目的臓器以外も全部見る「系統的読影」で異常所見を拾う必要があります。例えば救急で腹痛精査でCTを撮影→異常なしで帰してその後は音沙汰なしだとしても、実は指摘可能な癌があったということもあり得ますからね。またcommon diseaseについてはある程度は本での勉強+実践で読影力を養う必要があると思われます。
「系統的読影」は、Twitterのごろ~にゃ先生のyoutube動画が分かりやすいです。これを参考に、自分なりの順序で系統的読影の習慣を付けてみてください。
ごろ~にゃ先生はYoutubeもTwitterもサイト(画像診断まとめ・画像診断cafe)での発信もどれも分かりやすく、特に画像診断まとめにはいつもお世話になっています。
↑の動画では私のツイートを引用してもらっています。
「縦隔」がなぜか「縦郭」と誤字になっていました。恥ずかしい。
放射線科以外の先生方は、画像の読影や読影の勉強に掛けられる時間があまりありません。専門外の領域については特にです。
それは仕方ないのですが、日常診療の中で、空いた時間に系統的読影をしてみる、自分がオーダーした画像と読影レポートを対比させる、出会った疾患を画像診断の本で読んでみるということで、着実にレベルが上がっていくはずです。
以下に、CT・MRI画像解剖、頭部CT・MRI、胸部CT、腹部CT、救急CT・MRIのオススメ本を紹介します。病棟業務や救急外来の日常診療に役立つ本です。
CT・MRI画像解剖
画像解剖に正確な医者ってかっこいいんですよね。
解剖用語は共通言語です。解剖用語が分からないと、読影レポートで指摘されている部位がどこのことなのかも分かりません。
・CT・MRI画像解剖ポケットアトラス
画像解剖で持っておきたいのはこの本です。デスクに並べて画像を見ながら参照する本です。普通の科の先生は1巻と2巻だけでよいと思います。
頭部CT・MRI
・ここまでわかる頭部救急CT・MRI
救急外来の対応でCT・MRIが一冊にまとまった本がほしいなら、この本があれば十分だと思います。脳血管障害のページが多く救急外来での実戦に即しています。脳画像の本はMRIのものが多いのですが、CT所見が多く載っているのも使いやすいです。
救急以外の頭部CT・MRIについてもまとまった本を持っておきたい方は、「よくわかる脳MRI」の最新版と「頭部単純CTこと始め」をオススメします。
・よくわかる脳MRI
放射線科・脳神経内科・脳外科を除く医師にとって、頭部MRIはこの一冊で十分です。版を追うごとに分厚くマニアックな疾患が網羅されるので、買うなら早めに買いましょう。基本的に1疾患見開き2ページで記載され、日常臨床で出会う疾患はほぼ網羅されています。
このKEY BOOKシリーズはハズレがなく、気になる領域のものは買ってみて損はありません。
・頭部単純CTこと始め ―次のステップまでつなげよう―(画像診断増刊号)
雑誌「画像診断」の増刊号です。頭部CTに特化した本は貴重で、この本は割と短時間で通読可能です。頭部CTはMRIに比べて検査へのアクセスがよい割に、本があまりなかったんですよね。
雑誌の増刊号なので、売り切れたら別の本を紹介します。
胸部CT
・胸部 画像診断の勘ドコロNEO
放射線科・呼吸器以外の医師にとって、胸部CTはこの一冊で十分です(放射線科でも日常読影には十分な気も)。胸部CTが中心ですが胸部レントゲン、CT、PETまで網羅、疾患は肺癌・肺炎・COVID-19肺炎・間質性肺炎などのcommon diseaseを中心に、日常疾患で出会う疾患が網羅されています。画像が多く、また「小葉中心性」「リンパ路性」分布から考える疾患など分かりやすく、読み進めることができます。何か一冊を選ぶなら、これを見てみてください。
腹部CT
救急外来で撮った腹部CTで自分で判断しないといけない疾患って、消化管領域が多いです。消化管のCTがたくさん載っている本と言えばこれです。同じKEY BOOKシリーズで「肝胆膵の画像診断」もありますが、肝胆膵の方は救急疾患が少なめです。
・わかる! 役立つ! 消化管の画像診断(画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)
救急CT・MRI
・すぐ役立つ救急のCT・MRI 改訂第2版 (画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)
上述したKEY BOOKシリーズの救急版です。救急外来で出会う疾患のCT・MRIを、common diseaseを中心に網羅した一冊で、使いやすいです。救急外来をする先生には通読もオススメです。
これだけ持っていれば十分だと思います!
「医学書(新品)を安く買う方法」「医学書を高く売る方法」についてはこちらの記事で紹介しました。
専門医前の放射線診断医向け(生き残り戦略とオススメ本)
放射線科医の先生には私がオススメ本を紹介しなくて色々な情報があると思うので、オススメ本の紹介はほどほどにして、私が思っている放射線科医として生き残る戦略や、専門医前にやっておけばよかったと後悔したことなどを紹介していきます。
まずはオススメ本を一つ。
放射線科研修読本
専門医前の先生の必読書ですね!!
私の一押しの本です。なぜTwitterでも複数回ツイートしているかというと、私もコラムを書いているからですね()。
この本は今までにない本です。放射線科医としての過ごし方、研修プログラム、専門医試験について、各種資格、勉強法、オススメ教科書、研究・留学、バイト・お金事情まで書いてあります。
上も同僚もたくさんいる医局・病院に所属しているなら色々と情報が入り放射線科医の友人もできるでしょうが、放射線科医の人数が少ない施設にいると、どうしても情報格差が出てきます。この本は、そんな情報格差を埋める一冊です。むしろこの本を読んでないと、読んでる人に情報で負けてしまう…とも思えてくる本ですね。
私は最初、企画と初版の発行部数を聞いたときは「対象読者が少なすぎて売れないでしょ…」と思ったのですが、売れまくっているんですよね。これは意外でした。
発売直後の感想はこちらのツイートで紹介しました。
放射線科のオススメ本は、全部「放射線科研修読本」に書いてあります。なのでこの本を買えば、次にほしい本が見つかります。
ちなみに私はコラム「医師の副業について:不動産と株式投資を例に」と題して不動産と株について書きました。まさか放射線科の本で不動産と株について書く日が来るとは。
300例で学ぶ 読影レポートの流儀
放射線科に入ってできるだけ早く読みたいのは「読影レポートの流儀」ですね。
MRI、CT、X線、PETのモダリティ別に、日常臨床でよく出会う疾患・所見を中心に、読影レポート作成時に必要な知識の解説 → レポート記載例を309例!も紹介してくれています。
私は専攻医のみなさんが羨ましいです。私が入局したときはこういう本はなくて、本で知識は入れられてもどうレポートを書いていいか分からない。上の先生の所見の真似をして書いてみると、別の先生から「これはこう書いちゃだめだよ」と直されるの繰り返しですよ。今はこの本を読めば、commonな疾患・所見について309例ものお手本が手に入るわけです。
これは買いです。
注意点としては、読影レポートというのは本当に流儀があって、A大学流とB大学流、C病院流の流儀、個人個人の流儀やこだわりがあり、書き方については明確な正解、明確な間違いというのはほとんどありません。なので、特に文言については所属する施設の流儀を尊重しつつ、注目すべき所見や書き方の参考として読み込むのがよいと思います。
「先生の所見の書き方はおかしいですよ。ほら、この読影レポートの流儀にも書いてあるように…」と言うのは御法度ですね。
放射線科医としての生き残り戦略
専門医前の放射線科医の先生方にアドバイスと言ってはおこがましいですが、自分の体験から普段考えていることを書いていきます。
放射線科医としての私自身のことを書くのは、このブログでは唯一の機会かもしれません。
最初は長いですが私が大学での常勤を辞めて非常勤のみ放射線科医になった経緯を、そして放射線科医として仕事を得る、生き残るにはどうすればよいか、特に専門医前の放射線科診断医を対象に書きました。私がやってきたこと、やっていればよかったことです。
きっと役立ちます(たぶん)。
非常勤のみ放射線科医になった経緯
私は大学4年生くらいから大学の放射線科に出入りを始めて、マッチングのときには大学の放射線科に入局することを決めていたので、マッチングも出身大学しか受けてません。私は当時から大学史上主義で、教授になろうとは思わないまでも、大学の医局で臨床・研究・教育全部頑張ろうと思っていました。
入局後は画像診断の勉強をしながら、大学院生として臨床研究、病棟・当直(大学で)、外勤、バイト当直と頑張っていて、当直入れると月36日勤務くらいでした。放射線科医としては多いですよね。入局時には子供もいたので、家での時間も確保しつつ、暇な当直や読影の合間はひたすら勉強をして、トイレの最中にも研究デザインを考えてましたね。
今考えると、よくやってました。でも、人は頑張り過ぎるとなかなか続かないです。
異動を機に社会不安障害を発症して、動悸がしたり注射するときに手が震えるようになって、悩んでうつ状態になりました。精神科で治療をしながら、1年半ほどは常勤を続けました。私は元々社会不安障害的な気質があるのは自覚しているので、このまま大学にいて学会発表を続けたり、この先シンポジウムの演者になったりすると、つらいのが続いちゃうんですよね。いつかは人前に出るストレスや忙しいのから解放されるために頑張っていたのですが、ラクするために頑張る前に、まずラクになってから考えればいいと思い直すようになりました。
ここまでで放射線診断専門医、核医学専門医は取り、大学院卒業し学位は取れていたこともあり、リタイアしました。この時までに不動産を買い進めていて、退職と同時に不動産所有法人を設立して、ここから不動産を一気に拡充したのですが、医療以外の収入源があることは心強かったです。
人はいつメンタル不調になるか分かりません。私は現在週4の非常勤のみ勤務ですが、それでもセロトニン不足の症状が再発してしまい、薬の力を借りて普通の生活ができています。常勤になると悪化が目に見えてるので、週4を限度として、自分を守っています。
メンタルなどの体調以外にも、仕事を続けられなくなることはあります。
よく言われるのは「AIに仕事を取られる」ですね。放射線科医は割と楽観的ですが、今から20年30年経つと想像できないような進歩が来るはずです。今から30年前に、誰もが一人1台、てのひらサイズの超高性能コンピュータ(スマホ)を持って世界中と繋がるなんて、考えられなかったですからね。AIが所見を全部書いてくれる未来の方が想像が簡単ではないですか。
放射線科医として順調に常勤で勤務を続けるつもりでも、人生何があるか分かりません。
何らかの理由でドロップアウトしてる人はたくさんいます。私の周りにはいます。類友ですね。周りにそんな人いないよ!と言う人は、近くにいないだけです。
選ばれる放射線科になるために
私の場合は消極的に非常勤のみ放射線科医になってしまった訳ですが、中には積極的に常勤を辞める人もいるでしょう。また、順調に常勤医としてキャリアを重ねるとしても、常勤先を変えたり、非常勤バイトをやることはあるはずです。
放射線科の求人って、公開される求人が少ないんです。私が働いている病院でも放射線科医を探そうというとほとんどは「誰かいい人いない?」から始まっていて、常勤・非常勤ともに紹介での就職が多いです。
人材紹介会社での求人は常勤はまだありますが絶対数が少なく、非常勤の求人はほとんどありません。非常勤で多いのは健診・検診の読影とか、給料が安かったりと、なかなか厳しい状況です。
画像検査施設の読影、遠隔読影も、単価が高いところは紹介でないと入れないところもあります。
放射線科医として仕事を得るのは他科と比べると少しハードルが高い印象ですね。
さらに、特に業務委託で契約しているところ(単価×件数での契約)は、雇用契約よりも切られやすく、経営状況や読影医の実力不足、問題医師と思われると、短期間の予告で切られてしまっても文句が言えません。
では、「選ばれる人材になること」「切られない人材になる」「何があっても仕事ができる」ために、我々は何をすればよいのでしょうか。特に専門医前の先生方に意識してほしいことを紹介します。
私は常勤医を辞めて非常勤のみ医師ですが、やりたい仕事ができています。年数回程度、空いているなら読影をお願いしたいんだけど…と相談もいただいていて、とてもありがたい環境です。
自分が「選ばれる人材」と言うつもりはありませんが、仕事の声を掛けてもらうような放射線科医としてやっていくために、また働けなくなっても生活できるように意識していることがあります。
「おい、ふくろう。これは間違いだろ!」と思うことがあるかもしれませんが、本記事はほとんど私の主観ですので、TwitterのDMで優しく指摘してください!
結論から言うとこれです!
- 診断専門医がないと一人前の画像診断医として見てもらえない。診断専門医を取れないならプライドは捨てる。
- 何か一つ専門領域を持つか、マルチモダリティの人になる。
- 専門医取得までに苦手な領域をなくしておく。
- 新しい技術を敬遠しないで時代に付いていく。
- 金のために闇堕ちするな。
- 辞めた職場の人との関係を切らない。
- 職場のルールに逆らわない。診療放射線技師・事務の方に嫌われないようにする。
- 患者対応を0にせず、いざとなったら放射線科以外の仕事もできるようにする。
- 働き続けないと生活できないような高額な自宅を買わない。
・診断専門医がないと一人前の画像診断医として見てもらえない。診断専門医を取れないならプライドは捨てる。
残念ながら画像診断医は、診断専門医がないとあまり仕事が取れません。正確には診断専門医がなくても、実力があると理解されている人に誘われたり、公開求人でも健診読影はあります。が、数は少ないですし、専門医不要の読影求人はそもそも放射線科医でなくてもOKなんですよね。
専門医はあればいいに決まっているのですが、様々な理由で中断してしまうことがあります。昔と違って、今は機構認定になって放射線科研修を再開するのも大変です。
専門医がなくても、生活するためには仕事をしないといけません。研修プログラムに乗れなくて思うように読影の仕事が見つからないなら、「自分は放射線科医だから病院での読影しかしない」みたいなプライドは一度捨てて、健診バイトでも健診読影でも、老健のいるだけバイトでも、未経験歓迎の在宅医療バイトでも選択肢を広くしてみましょう。たまに「検査施設での問診・造影剤対応バイト」が公開求人で出ることがあります。これは結構時給が良いですし、暇な時間は勉強ができてオススメです。
とりあえず、非公開求人が多数集まる大手人材紹介会社には登録しておいて損はないです。代表的なのはエムスリーキャリアです。
・何か一つ専門領域を持つか、マルチモダリティの人になる。
何か一つ、これだけは負けないという領域を持つと強いです。
私の場合はPET診断ですね。PETなんてみんな読めるでしょと思うかもしれませんが、PETは非専門の放射線科医と専門の放射線科医が読影する所見のgapが大きい領域です。当該機種の撮像原理・特性を加味した読影が必要ですし、FDG以外の核種も読影してますからね(脳メチオニン、心筋血流、アミロイド、他の研究用核種も)。私の場合はハクを付けるために、核医学専門医・PET核医学認定医・第1種放射線取扱主任者も取得しています。「核医学をちゃんと勉強した人なんだ」って思われますし、実際にちゃんと勉強も研究もしました。
専門領域があっても他がポンコツだとダメなので、他の領域(特に頭・胸・腹部)は普通に読めるというのが必要です。
あるいは専門領域を特に持たずにマルチモダリティの人になるという道です。CT・MRIは全部位読める、胸部レントゲン、胃透視、エコー所見の確定もできる、核医学も普通の核種なら読める、マンモグラフィ認定医も持ってるなら、どこでも働けます。特に詳しい領域や研究してますというのは別に要らないです。
このどちらかになれれば、「空いてる曜日があればウチで週1働けませんか??」という声が掛かるようになるでしょう(良好な人間関係も必要です)。
・専門医取得までに苦手な領域をなくしておく。
苦手な領域の所見を書いて、上級医に所見をチェックしてもらえるのは診断専門医取得までです。
私はキャラ的に「ちょっとこれ見てみて~?」と気軽に隣の読影医(下の学年にも)聞いているのですが、仮保存した所見を直してもらうというのはできないんですね。
私はよくいる頭頸部MRI・関節MRIが苦手な人です。この領域って、放射線科医が複数いる病院だと「得意な人が読んだ方がいいな」でつい任せてしまうし、検査専門施設では本当のプロが引き受けてたりして、読まなくても何とかなってしまうんですよね。それに、診断専門医を1回更新するくらいの読影経験になると、どの領域でも全然分からなくてもふわっとした所見を書いて、とりあえず所見確定する技術が付いてしまうのです。そうなると、苦手な領域は苦手なまま。
専門医前にチェックしてもらうのは貴重な経験です。苦手な領域は放置せず、苦手な領域こそはやめに本を読んで知識を付け、とにかく書いてみて、どんどんチェックしてもらってください。
・新しい技術を敬遠しないで時代に付いていく。
放射線科医になってから定年まで、40年くらいでしょうか。おそらく、定年になっても全く仕事をしない人の方が少数派ですよね。40年も経つと、放射線科の仕事内容は全然変わっているかもしれません。
今の定年前の学年の先生たちなんて、放射線科医の仕事と言えば透視と血管造影(検査)の手技が中心、それがCT・MRI読影中心になっても第一線で活躍していますからね。対応できていない先生もいると思いますが、研修修練施設から離れているのだと思われます。
これから、どんどん新しい技術が出てきます。
小さいところではMRIの新しいシーケンスとか、MRIエラストグラフィの所見記載など。大きめな領域では、dual energy CTによる解析評価、AI併用の画像診断、これからはフォトンカウンティングCTを利用した解析の評価とレポート作成など。
全く新しい検査が出てくるかもしれません。昔、CTの黎明期にCTを軽視した核医学の人は、SPECT/CT, PET/CT fusion時代になった今、CTを読めずに核医学の所見を書く人になっちゃってますからね。診療放射線技師で言う「レントゲンしか取れないおじさん」ですね。
新しい技術は敬遠せず、常に勉強する、若手に付いていく意識が必要だと思っています。これからはAIを併用した読影がどんどん普通になってくると思います。誰だか有名な人が言っていた「放射線科医はAIに淘汰されないがAIを使えない放射線科医は淘汰される」というのは心に留めた方がよさそうです。
私は、AIに淘汰されてもいいように、放射線科医の仕事が0になっても生活できるようにしています。AIがある程度放射線科医を代用するようになると、最初に切られるのは非常勤医ですからね。
・金のために闇堕ちするな。
読影は、質を落とせば多くの件数をこなせてしまいます。特に、単価×件数で業務委託契約をする検査施設では、低クオリティな所見を量産する放射線科医がいます。倫理観がなければ、クオリティを下げて量産すれば時給が何倍にもなります。
でも、こういう医者になったら放射線科医としては軽蔑の対象です。画像の向こうには生きた人間がいる、自分の所見が命を左右することがあるという当たり前のことを忘れずに、丁寧な読影を続けてください。あなたの誠実な読影は、周りの人が見ていてくれます。真摯に読影をする人には、自然と人も仕事も集まるでしょう。
私はそれでも闇堕ちした医者に時給で圧倒的に負けるのが悔しいので、「1件当たりの税引き後収入は俺の方が多いからな!」と負け犬の遠吠えをしています。
それって年収で負けてるだけでは…!
・辞めた職場の人との関係を切らない。
繰り返しますが、放射線科の仕事は紹介が多いです。辞めた職場の人との関係は切る必要はありません。仲良い人とは仲良いまま。お互いに困ったときは仕事を紹介したり、紹介されたりすることもあるでしょう。私は今行っている週4回の勤務は全部、人との繋がりで始まってます。
・職場のルールに逆らわない。診療放射線技師・事務の方に嫌われないようにする。
医局派遣で非常勤バイトに行っているときと、自分単独で仕事を得るのは違います。
医局派遣で来た医者は大事にされてますし、結構強気ですよね。検査プロトコールがよくないとか、レポートの書き方は俺流だから文句言うなとか。意見はそれなりに通ると思うのですが、それはその人の実力じゃなくて、医局の後ろ盾のおかげなんですよね。
常勤先の後ろ盾がなくなって私のような非常勤のみ(いわゆるフリー医師)になると、自分がプレーヤー兼マネジャーです。望まれる実力がなかったり、面倒な人だったり、問題行動を起こすと、切られます。私は切られたことはないですが、切られた人は何人も見てきました。
実際には実力不足で切られるのは稀です。多いのは検査施設が要求するレポートの書き方に従わない、我を通すパターンです。後は、診療放射線技師、事務職員に高圧的なパターン。この2つは繰り返すと辞めてほしいリスト入りです。雇う側の立場では、レポートの書き方に従わない、常勤の技師・事務に高圧的な非常勤医師に働いてほしいと思わないですよね(バックに医局もいないのに)。
これは常勤医でも同じです。変な人、面倒な人にならないように、ついやってしまう人は意識して直した方がよいと思います。
・患者対応を0にせず、いざとなったら放射線科以外の仕事もできるようにする。
順調に放射線科医を続けられるならよいですが、万が一放射線科医としての仕事を取れなくなった場合、患者対応ができないと、仕事の幅がぐっと狭まります。
私は初期研修医のときはCCUが好きで何か月もいたり、内科系は全科回ったり、放射線科に入ってからも病棟業務も当直もしていて、患者対応はできました。それが社会不安障害などのメンタル不調で退職したことをきっかけに患者対応なしの仕事だけをするようになると、患者対応自体が嫌なものになってしまったのです。これでは、読影以外の仕事はできないです。内科外来はもちろん、今は健診もやりたくない、当直もできないです。
私の場合は放射線科医としての仕事が減ってもいいように不動産経営をしている特殊ケースですが、各人に合った別の道も、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。自分が同じ働き方で働けるのが当たり前と思っていると、思わぬ苦難に対応できません。本当にAIが読影所見を全部書くようになっちゃう可能性もありますからね。でも、患者対応は人間にしかできません。
患者対応のある仕事を、少しでも続けるのがよいと思います。
・働き続けないと生活できないような高額な自宅を買わない。
これは本稿の趣旨ではないので簡単に書きます。「自分が働き続けるのが当たり前」と思っていると、共働きでもないのに、つい1億円のタワマンとか買っちゃいます。それ、働けなくなったらどうするんですか??
思わぬことで働けなくなる人は、たくさんいます。
放射線科医として、あるいは医者として働けなくなっても生活できるためには、収入を複線化するか、固定費を少なくするのいずれかです。私は最悪医業収入0でも不動産で生活はできますが、2010~2018年の不動産が安い時期にたくさん買えただけで、再現性は低いでしょう。
最大の固定費と言えば、自宅の住宅ローンですね。本業の収入が減って毎月の収支がマイナスになってしまうのは現実的ではありませんが、万が一不測の事態が起こっても対応できるように、安全寄りの選択も必要だと思います。
オススメ本を少し
私は核医学、特にPET診断が専門なのですが、頭頸部・関節MRIの読影が苦手です。
上で「専門医取得までに苦手な領域をなくしておく」と書いたのに、頭頚部と関節のMRIはほとんどやる機会がなく、自分は苦手なままでした。
頭頸部のオススメは「頭頸部画像診断ナビゲーション」です。私はこれを読む前は、翼口蓋窩、卵円孔、なんとか間隙などの頭頸部の解剖用語を聞くだけでめまいが起こる頭頸部画像誘発性めまい症(自己診断)持ちだったのですが、この本を読んでから軽快しました。本当に、専門医前に欲しかったです。
・頭頚部画像解剖ナビゲーション
あとは関節ですね。みなさん買う本だと思いますが、関節MRIは後回しにせず、はやい段階から買っておいて、特にこの3冊は通読しておいた方がいいです。
診断専門医を取ってからも所見について相談はできますが、自分のレポートをチェックしてもらう機会は取れないですからね。はやめに勉強して、書いて書いてチェックしてもらいましょう~。
・肩関節のMRI改訂第2版 読影ポイントのすべて
・膝MRI 第3版
・足の画像診断 第2版
あとは、胃透視検査です。
私は「胃透視は今後減っていく検査だし、大学でもほとんど放射線科担当の検査がないから」とほとんどやってなかったのですが、これが大間違いでした。
今の40歳以下の放射線科医は胃透視を読影できる人の方が少ないのですが、胃透視の読影バイトってめっちゃ条件がよいんですよね。いやほんとに、読影バイトで稼ぐなら健診の胸部レントゲンと胃透視です。時給換算するとCT・MRI読影では不可能な案件があります。
健診の胸部レントゲンの読影は日常診療で胸部CTを見るときに参照したり、やっているうちにできるようになりますが、胃透視は誰かに教えてもらいながらトレーニングしないと読めるようにならないです。
胃透視バイトがおいしいって誰も言ってなくないですか??
今、よい案件を持っている人たちは手放さないでしょう。でも、若手で胃透視を読める人がどんどん減る中、世代交代が起こった時に、胃透視が読めると強いです。
ぜひ読まず嫌いにならず、専門医前にトレーニングしてください。
オススメはこれです。めっちゃ分かりやすい。
・シェーマ+内視鏡像+病理像で一目瞭然! これなら見逃さない! 胃X線読影法 虎の巻
でも私はトレーニングしなかったので責任を取れるレベルでは読めず、バイトができません。とほほ…
投資はするのに透視はしないんだね!ナンチャッテ
最後に、私の専門の核医学ですが…核医学を専門としない方はこの一冊で十分でしょう。診断専門医試験ならこの一冊+過去問でなんとかなります。核医学専門医試験の対策には、もう少し勉強が必要だと思います。
・わかりやすい核医学
ここ10年くらいPETでオススメの本がないな~…と思っていたら、出ました!!
・はじめましてのPET/CT
Time-of-flight (TOF)、Point spread function (PSF)、半導体PET世代に対応。
PET総論では、FDGの生理的集積と集積に影響を与えるピットフォールについて詳細に解説されています。FDG-PETは生理的集積の理解が大事で、この2つについては何度も読み返しましょう。
臨床編では各悪性腫瘍についてTNMの順に解説され、「悪性だけど低集積」「良性だけど高集積」の病変について意識的に書かれています。巻末付録には「悪性だけど低集積」「良性だけど高集積」の一覧表があり、まさにこんな本が欲しかった!!と言える一冊です。
腫瘍FDG以外(てんかん、大血管、心サルコ)以外のFDG-PET、FDG以外のPET製剤についても解説されています。FDG以外の製剤で保険収載されているのはアンモニア(心筋血流)くらいですが、腫瘍・脳・心臓の領域で様々な核種があります。普通の人はこんなのもあるんだな~くらいで十分だと思いますが、私はFDG以外の核種に将来のPETの可能性を見て専門にしました(なお、そこから10年以上経っても日常臨床で使える核種はほとんど増えませんでした…泣)。
核種試験対策には、技術寄りの本もあるとよいです。古めですが初学者に分かりやすい本として、「PET検査・診断ー基礎のキソ」をオススメします。
・PET検査・診断ー基礎のキソ
長くなりましたが、本記事は終わりです。語っちゃいましたね~。次からはまたお得情報を発信します。
【今、旬のお得情報!】
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さらに初年度は3%還元(月100万円超の利用は1%還元)です。
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・ お得な登録キャンペーン・招待コード一覧
・ 医師向けの新規登録キャンペーン一覧