2024年8月30日、株式会社クラダシ(証券コード 5884)は従業員持株会の設立に関する適時開示を発表しました。この発表は、同社の従業員だけでなく、株主にとっても重要な情報です。
↓↓クラダシIR
従業員持株会設立に関するお知らせ
この記事では、従業員持株会の概要や、その設立がクラダシの株価や経営戦略にどのような影響を与えるかについて解説します。
従業員持株会とは?その役割と企業にとってのメリット
従業員持株会(Employee Stock Ownership Plan, ESOP)は、企業が従業員に自社株を定期的に購入させるための制度です。
この制度は、従業員が自社株を保有することで、会社の成長に対するモチベーションを高め、経営と従業員の利益を一致させることを目的としています。

企業側の一般的なメリットとしては、以下の点が挙げられます。
・従業員のモチベーション向上
従業員が株主になることで、業績向上への意識が高まり、生産性の向上が期待されます。
・株価の安定化
定期的な株式購入によって市場での需要が安定し、株価の下支えが期待されます。
・流動性の向上
株式市場における取引量が増加し、株価の安定と市場での評価向上に寄与します。
クラダシの従業員持株会の詳細
クラダシが発表した従業員持株会の内容は、次の通りです。
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従業員持株会設立に関するお知らせ
当社の従業員による当社株式の購入に際して、インサイダー取引へのリスクを低減させたうえで、従業員自らが当社株式を取得・保有することで、株主の皆様と同様の視点を共有し、さらなる企業価値向上を図ります。
また、安定的な当社株式購入の需要確保及び出来高増加に寄与し、株式市場における流動性向上につなげることを目的としております。加えて、魅力的で加入しやすい制度とするために、平均的な奨励金付与率よりも高い奨励金付与率を設定することで、従業員の福利厚生制度の充実を図る目的もございます。
- 名称: クラダシ従業員持株会
- 対象者: クラダシの従業員(任意加入)
- 開始時期: 2024年9月
- 拠出金: 1口1,000円、上限100口
- 奨励金付与率: 拠出金の30%
奨励金付与率30%とは、従業員が拠出した金額の30%を会社が追加で支援する制度です。
例えば、従業員が1,000円を拠出すると、会社がその30%にあたる300円を上乗せし、合計で1,300円分の株式を購入できます。
奨励金の業績への影響
この30%の奨励金は、従業員にとって大きなメリットですが、クラダシにとっては「販売費および一般管理費」(販管費)として計上されるコストとなると予想されます。
営業費用として処理されるため、営業利益に直接影響を与える要素となります。
株価に与える影響と経営陣の意図
従業員持株会の設立がクラダシの株価に与える影響について考えると、いくつかの重要なポイントが浮かび上がります。
以下は一般的な考えであることにご注意ください。
- 経営陣の株価判断
経営陣が従業員持株会を設立し、従業員に自社株の購入を奨励するということは、現在の株価が割安であり、将来的に上昇する可能性が高いと判断している可能性があります。
この判断は、株主・市場に対してポジティブなシグナルとなり、投資家の信頼を得ることにつながります。 - 市場への需要増加
従業員持株会を通じて、定期的に株式が購入されるため、株価の下支え効果が期待できます。特に、奨励金によって拠出金が増加することで、より多くの株式が市場で購入され、需要が安定します。 - 長期的視点の促進
従業員持株会は、短期的な利益追求ではなく、長期的な企業成長を促進するための制度です。
従業員が自社株を保有し続けることで、企業の成長に対する責任感が高まり、結果的に企業価値の向上につながります。
売却制限と従業員の退職後の取り扱い
従業員持株会で購入した株式には、通常「ロックアップ期間」と呼ばれる売却制限が設定されます。
この期間中、従業員は株式を売却することができません。これは、短期的な売買による利益を防ぎ、従業員が長期的な視点で企業に関与することを目的としています。
持株会で株を買って3割の上乗せ分をもらい、即売って儲ける…というような利用はできません。
退職時には従業員持株会から退会することになりますが、その際には持株会で保有していた株式が個人の証券口座に移管されます。その後、自由に売却することが可能ですが、インサイダー取引規制が適用される場合もあるため、注意が必要です。
従業員には役員は含まれない
従業員持株会に参加できる「従業員」というカテゴリーには、一般的に役員(取締役や執行役員)は含まれません。
役員は企業の経営に直接関与するため、法的にも従業員とは異なる位置づけになります。このため、従業員持株会は通常、一般従業員を対象とした制度となります。
IRへの質問とその結果

今回の開示を受けて、ふくろうは以下の3点をIRに照会しました。
- 拠出金の上限10万円(1,000円×100口)というのは、月当たりという理解でよいのか。
- 奨励金に相当する30%分は、市場内からの買付を行うのか。また、従業員持株会の買付による希薄化は生じないと理解してよいのか。
- 奨励金に相当する30%分は、クラダシにとっては販管費としての出費になると理解してよいのか。
回答は以下の通りです。
拠出金の上限10万円(1,000円×100口)というのは、月当たりという理解でよいのか。
→1ヵ月当たりの上限である。
奨励金に相当する30%分は、市場内からの買付を行うのか。また、従業員持株会の買付による希薄化は生じないと理解してよいのか。
→奨励金部分を含め市場内で購入するので、株式の希薄化は生じない。
奨励金に相当する30%分は、クラダシにとっては販管費としての出費になると理解してよいのか。
→販管費となる。
クラダシのIRは回答がはやく正確で、とても助かります。
まとめ:クラダシの成長戦略を読み解く
今回の適時開示により、クラダシの成長戦略の一端が明らかになりました。
従業員持株会の設立は、単なる福利厚生制度ではなく、企業と従業員の利益を一致させ、長期的な企業価値の向上を目指す重要な施策です。
投資家としては、この適時開示を通じて、クラダシの将来的な成長性や経営陣の株価に対する自信を読み取り、今後の投資戦略に反映させることが求められます。
私は株主として、クラダシが目指す未来に向けて、今回の従業員持株会の設立がどのように貢献するかを注視していきます。